高齢者の食事の問題。健康と長寿になる食事の摂り方。漢方薬・食材など TVシンポジウムから

健康長寿

健康長寿のため、食生活で気を付けるポイントは、
年代に寄っても変わってきます。

若者~中年は 過栄養=食べ過ぎの生活習慣病対策となりますが、
高齢期になると、低栄養=タンパク質が足りなくなりがちとなります。




低栄養とは

低栄養とは、エネルギー・タンパク質が不足している状態を指し、

・抵抗力が低下するので風邪を引きやすい
・風邪から肺炎を引き起こしやすい 

などの心配が出てきます。

低栄養であるかどうかを調べるには、肥満度を見ると分かります。
BMI=体重を身長の二乗で割った数が、18.5未満だと低栄養です。

また、半年間で2~3キロの体重減少や、
血清アルブミン値が3.5g/dl未満だと低栄養と言われます。

 

低栄養の原因

【食欲が無い】

うつ病にかかわる脳のホルモンが食欲を低下させることもありますし、
生きる楽しみがない気力がない、なども食欲を落とす原因になります。

食欲が無くなると体力が落ち、病気も起こりやすくなります。

【口腔内に問題がある】

噛むという行為は健康長寿に大きく関係があります。
きちんと噛める歯があることが大切です。
歯がないと美味しく食事が取れ無いものです。

歯の本数10本程度では、食事が美味しくないと感じているのに対し、
歯が20本あると、食事は美味しいと感じるそうです。

食事を美味しいと感じなければ食欲が沸かないので
高齢者になっても多くの歯を残すために、
口の中の健康を保つことが大切です。

また、歯周病は歯を失う大きな原因となります。
また、歯を失うと認知機能にも影響が出てくると言われています。

歯が殆ど無い人と比べると、
歯が無くても義歯の人の方が、認知症の割合が
低いというデータもあります。

加えて、歯周病菌は、
糖尿病・狭心症・心筋梗塞・心内膜炎・動脈硬化
肺炎・骨粗しょう症との関連もあるとも言われています。

今は、口腔ケアをする専門の医院などもあります。
自分では落としにくい歯石や歯の汚れを
クリーニングでキレイに出来ます。

美味しく食事を摂る為に、そして体の健康の為に、
口腔ケアに気を付け、歯を失った場合には、義歯を入れましょう。

 

低栄養を防ぐ 栄養バランスの取れた食事を

健康な高齢者は良く食べると言われていて、
若いころの8割を下回ることはあまりないと言われています。

美味しく食べて体を動かし筋力体力を付けることが
健康長寿の基本です。

そこで、タンパク質を多く含む食品を積極的に摂るようにしましょう。
低栄養は料理の工夫で改善できます。
 

不足しがちなたんぱく質を上手に摂る方法

・きんぴらに肉を入れる。
・冷や麦を茹でるときに片栗粉をまぶした鶏肉を一緒に茹でる

などが番組で紹介されました。

年を取るとそんなに食べられないので
ほかの食品と一緒に摂れるようにすると良いとのことです。

 

食欲が無い時にはどうすれば?

病気があって食欲が無ければ治療をしましょう。
原因無しで食欲のない場合には、漢方も良いです。

西洋医学で何も病気がないということを確認してから、
何も治療すべき原因が見当たら無ければ、
漢方治療としては「六君子湯」が良く使われます。

これは、体力が無くて胃腸が虚弱な人に処方される漢方で、
吐き気・胃痛、胃もたれ 食欲不振・全身倦怠感
手足の冷えなどに用いられます。

胃腸を通じて全身を元気にする薬なのです。

番組内では、子供の頃から胃腸が弱かった女性が登場しました。

膨満感があって年齢と共にひどくなったそうで、
年のせいか3度の食事が辛くなったとの事です。

病院に行って検査しても異常なしでした。
そこで、漢方の専門医にかかり、処方された漢方
「六君子湯」を服用し、1か月で食欲が出て
体調も改善してきたそうです。

六君子湯は食欲促進ホルモンに作用し、体を元気にします。
 

六君子湯で長寿に!

また、六君子湯は加齢に寄る 脳や心臓の働きの低下を回復させ、
長寿になる事がマウスに寄る実験で分かっているそうです。

六君子湯は食欲促進ホルモンのグレリンに作用し
食欲を促進するということが様々な科学的研究から分かってきています。

グレリンは胃のなかにある空腹ホルモンで、
脳に作用し食欲を起こします。

六君子湯にはこのグレリンに対する
下記二つの作用で食欲不振に効果が有ると分かっています。

1.グレリンを増やす
2.グレリンの作用を強める
 

六君子湯と寿命の関係

六君子湯は、老化にかかわるような重要臓器=
脳や心臓の病変を改善し寿命を延ばすということが分かってきています。

例えば、マウスの実験では、短命なすぐに老化して死んでしまうマウスに
六君子湯を投与すると生存率が明らかに上昇し、
正常のマウスには、還暦辺りから六君子湯をずっと投与してみると
寿命が延びるということがわかりました。

六君子湯を飲むと心臓の繊維の委縮(細く)が改善される事で、
突然死を防いでいると思われます。
 

六君子湯と認知症の関係

受動的回避試験の結果認知症を予防することも分かってきました。

※受動的回避試験=2つの箱で、暗い所と明るい所を作ると
ねずみは暗い所を好み、暗い箱に入っていこうとする。
そこに電気ショックを与え、入りたいけれど入れないという状況を作る。

六君子湯の投与をしていないマウスは、電気ショックを受けても
またすぐに暗い箱へと行くが、六君子湯を投与したマウスは
明るい所でじっと待っている時間が増えたことから、
学習記憶が改善することが分かりました。

六君子湯のまとめ

以上の実験から、六君子湯は、
人の健康寿命の延長に期待できるのでは?と思われています。

今回のTVシンポジウムに登壇された 乾昭夫教授が研究されています。

http://www.qlifepro.com/news/20160216/rikkunshito-is-extending-the-life-of-the-mouse.htmlより引用↓

鹿児島大学、北海道大学、国立がん研究センター、
株式会社ツムラらから成る研究チーム
「六君子湯グレリンプロジェクト」は2月、「Nature」を発行する
Springer-Nature社の「Molecular Psychiatry」誌に、
日本の医療用漢方製剤「ツムラ六君子湯」による、
老化促進マウスの寿命延長に関する論文を掲載。
同月、都内で研究チームの
鹿児島大学大学院 心身内科学分野主任教授の乾明夫氏、
北海道大学大学院薬学研究院 臨床病態解析学教授の武田宏司氏、
国立がん研究センター研究所
がん患者病態生理研究分野分野長の上園保仁氏らが
研究成果の発表記者会見を行った。

論文内容は生体内のホルモンの1種であるグレリンがマウスの実験において、
血管疾患などの老化関連疾患に対して保護する役割を持つというもの。
今回の実験は、漢方製剤の六君子湯の処置により内因性(生体内の)
グレリンを刺激し、老化促進マウスの寿命を延長させたことを見いだした。
同研究チームは、これまでに計12本の論文が
海外専門誌に掲載された実績がある。

 

これからの健康長寿、アンチエイジングの為に、
漢方も大きな期待が寄せられているようですね。
 

参考:奄美大島 長寿食

シンポジウム内で奄美大島の長寿食として下記が紹介されました。

・ハンダマ (ポリフェノールを含む食材)
https://www.pref.kagoshima.jp/ag06/sangyo-rodo/nogyo/nosanbutu/dentou/hanndama.html

・あずきがゆ
 

追記:その他漢方の話

TVシンポジウムでは 食事以外にも
体調不良を漢方薬で改善するお話がありましたので追記します。

西洋医学が人の命を救う事を第一に掲げた医学である事に対して、
命を脅かすまでいたらないもの患者さんの自覚症状を
改善させるのが漢方です。

伝統的な漢方診療が西洋医学と共に保険で
できるのが日本の医療の良い所。

きちんと検査を受けること 結果現代医学から見て病気がない事を
判断してもらうことで、漢方で安心して治療が出来ます。

高齢者の方に多い自覚症状としては、
めまい・頻尿・足腰筋力衰え・関節痛などがあります。

まだそれが小さなうちに対応しておくことが大事です。

番組内に登場したのは、
そういった症状があるけれどなかなか治療に結びつかなかった
若いころから冷えに寄る体調不良に悩まされていた60代女性の方です。

年齢と共に 外出する元気もなくなり、ご本人様曰く
「年や更年期のせいかと思って居た」とのこと。

しかし、年々重くなる症状に悩み、大きな病院で検査を受けるも異常なし、
投薬も無しで、体調不良が続きました。

そこで、漢方外来で「防己黄耆湯」を処方してもらいました。
「防己黄耆湯」は、体内の水分を排出し倦怠感を無くすものです。
今では海外旅行に行けるようになったり、
手つかずだった畑作業も出来るように迄回復したとのことです。

きちんと検査を受け、結果現代医学から見て病気がない事を
判断してもらうと、漢方で安心して治療が出来ます。

西洋医学で対応出来なかった症状も
漢方で改善することがあるのです。

TVシンポジウムより