老後の暮らしを考えるとき、つい「老後資金」ばかりに目が向きます。でも、毎日暮らす家も、これからの生活を支える大切な資産です。若い頃には何とも思わなかったドアノブや収納、照明なども、年齢を重ねると「使いにくい」と感じることがあります。
だからこそ、まだ元気に動けるうちに、家の中を少しずつ整えておきたいものです。
こうした住まいの工夫は、老後の自分のためだけではありません。親の介護が始まったときにも、同じような見直しが必要になることがあります。
ドアノブは、握らなくても開けられるものに
年齢とともに握力が弱くなると、丸いドアノブを握って回す動作が負担になることがあります。そんなときに便利なのが、レバーハンドル。
握り込まなくても、手のひらなどで押し下げて開けやすいため、将来の小さな負担を減らせます。すべてを一度に交換する必要はありませんので、まずは毎日よく使う部屋から見直してみるのも一つの方法です。
高い場所に「取りに行く収納」を作らない
吊戸棚など、高い場所の収納も一度見直してみたい箇所です。高いところの物を取るために、無理に手を伸ばしたり、踏み台に乗ったりすることが増えると、それだけ転倒のリスクも高くなります。
毎日使うものは、できるだけ腰から目線くらいの高さへ。重いものや割れやすいものは、高い場所に置かない。「たくさん収納できる家」より、「無理なく取り出せる家」を意識することが大切です。
私の母は、踏み台から落ちた際に腰を強く打ちました。シップで良くなったと思っていましたが、晩年圧迫骨折の跡が見つかりました。そんな事もありました。
照明は「見えやすさ」を意識する
年齢とともに、暗い場所では物や段差が見えにくくなることがあります。特に、階段や廊下、玄関、洗面所、キッチンなどは、十分な明るさを確保しておきたい場所です。
キッチンなら手元が見えやすい照明にする。廊下や階段なら足元が確認しやすいようにする。照明の色だけにこだわるのではなく「必要な場所がきちんと見えるか」を基準に考えてみるとよいかもしれません。。
掃除しやすい床も、暮らしやすさの一つ
床に物が多かったり、掃除しにくいラグやカーペットが多かったりすると、掃除そのものが負担になります。さらに、ラグのめくれや小さな段差は、つまずきの原因になることもあります。
だからこそ、床はできるだけシンプルに。掃除がしやすく、足元を確認しやすい環境にしておくことも、住まいの安全につながります。
私自身、お手伝いにお伺いしていたご家庭で、やはりカーペットのお掃除に四苦八苦しているお宅がありました。部屋の広範囲がカーペットですと、そこを衛生的に整えることは、なかなか大変になってきますし、気づいた時に 全面のカーペットを交換するには大掛かりになります。
出来るだけ、そして出来るうちに掃除しやすい床に変えておくのも良いかもしれません。
小さな「使いにくい」を、そのままにしない
ドアノブ。高い収納。暗い廊下。掃除しにくい床。一つひとつは、それほど大きな問題ではないかもしれません。
しかし年齢を重ねると、その小さな不便が少しずつ積み重なっていきます。そして、無理をした結果、転んだり、ぶつかったりすることもあります。
もちろん、住環境を整えればケガを完全に防げるわけではありません。それでも、避けられる危険を少しずつ減らしておくことには意味があります。
ドアノブは年を取ると握力が弱くなりますので、レバーハンドルにすると良いと言われています。
ケガをしにくい家は、これからの体を守る家
高齢になってからのケガは、単に「ケガをした」で終わらないことがあります。入院や安静によって体力が落ちたり、外出や運動の機会が減ったりするなど、その後の生活に影響することもあります。だからこそ、健康を守る方法は、食事や運動だけではありません。
毎日過ごす家を、無理なく動ける場所にしておくことも健康を守る準備の一つ。
そして、ケガを避けるための環境づくりは、結果として医療や介護にかかる負担を抑えることにつながります。
「老後になってから」ではなく、元気なうちに
年齢を重ねてから家を大きく変えるのは、体力的にも気力的にも大変。だからこそ、まだ元気に動ける今のうちに、少しずつ。
ドアノブを替える。収納場所を変える。照明を見直す。床を掃除しやすくする。どれも、大がかりなリフォームではありません。でも、こうした小さな工夫が、これから何年も続く毎日の暮らしを少し楽にしてくれます。
老後の安心は、貯金だけで作るものではなく、「無理をしなくても暮らせる家」を、少しずつ作っておくことも、これからの自分とお金を守る準備。ケガをしてから直すのではなく、ケガをしにくいように先回りしておく。
そのために必要なのは、大きなリフォームではなく、暮らしの中にある小さな「使いにくい」を見つけることかもしれません。
暮らしやすい住まいは、これからの健康を支える環境という資産。老後資金を守ることと同じように、毎日を安全に過ごせる住まいを整えておくことも、未来への小さな「資産防衛」です。

