お気に入りのカフェに入ったとき。なんだか落ち着くな。もう少しここにいたいな。そんなふうに感じることはありませんか。特別に高価な家具があるわけでもないのに、なぜか心地よい。
窓から入る光や、テーブルに飾られた小さな花。ゆったりとした椅子や、静かに流れる時間。そんな空間にいると、気持ちまで少しやわらかくなるような気がします。では、自分の家も、そんなふうに心地よい場所にできたら。
毎日帰ってくる場所。朝起きて、夜眠るまで過ごす場所。そこが自分の好きな空間になったら、いつもの暮らしも、少し違って見えるかもしれません。そこで、空間における心理学を勉強した経験から、今ある家具や持ち物を生かしながら、居心地のよい部屋を作るための小さなレシピをご紹介します。
「どんな気持ちで過ごしたいか」を考える
居心地のよい部屋と聞くと、家具を買い替えたり、おしゃれなインテリアをそろえたりすることを思い浮かべるかもしれません。でも、その前に考えてみたいことがあります。それは、その部屋で、どんな気持ちになりたいか。たとえば、
- 仕事や家事のあとに、ほっとしたい。
- 朝の光を浴びながら、ゆっくりお茶を飲みたい。
- 好きな本を読みながら、ひとりの時間を楽しみたい。
- 何もせず、ただのんびり過ごしたい。
- 好きな色に囲まれて、明るい気分になりたい。
同じ「居心地のよい部屋」でも、求めるものは人それぞれです。静かな部屋が好きな人もいれば、明るくカラフルな部屋が好きな人もいます。すっきりした空間が落ち着く人もいれば、好きなものが並んでいる空間に安心する人もいます。まずは、自分がその部屋で過ごしている様子を、少しだけ想像してみみてください。
理想のインテリアを決めるよりも先に、理想の時間を考えてみる。それが、自分に合った部屋づくりの第一歩です。
部屋の中に「好きな場所」をひとつ作る
部屋全体を一度に変えようとすると、時間もお金もかかります。そこで、最初は小さな場所から始めてみます。
窓辺のテーブル。
いつも座っている椅子のまわり。
ベッドの横。
お気に入りの棚の一角。
ほんの小さなスペースで構いません。たとえば、いつも使っているテーブルの上に、好きな花を一輪飾ってみる。お気に入りのマグカップを、すぐ手に取れる場所に置いてみる。好きな本を数冊、手に取りやすい場所に並べてみる。
それだけでも、そこに目を向けたとき、少しうれしい気持ちになるかもしれません。大切なのは、部屋を完璧に整えることではなく「ここにいると、なんだか好きだな」と思える場所を作ること。その小さな場所が、少しずつ部屋全体を見直すきっかけになることもあります。
目に入るものを、少しだけ整える
部屋にいるとき、私たちは思っている以上に、たくさんのものを目にしています。
テーブルの上の書類。
床に置かれたバッグ。
棚に並ぶ小物。
使い終わった日用品。
ひとつひとつは気にならなくても、視界に入るものが多いと、なんとなく落ち着かないことがあります。そんなときは、部屋全体を片づけるのではなく、いつも目に入る場所をひとつだけ整えてみます。たとえば、
- テーブルの上に、何も置かないスペースを作る。
- よく使うものを、ひとつのかごにまとめる。
- テレビの周りにある小物を少し整理する。
- ソファから見える場所に、お気に入りのものを置く。
すべてを片づける必要はありません。使うものは、使いやすい場所にあって良いです。思い出の品も、好きな雑貨も、無理に減らさなくて良いです。ただ、目に入る景色の中に、少しだけ余白を作ってみます。それだけで、部屋の印象が変わることがあります。
色をひとつ加えてみる
部屋の雰囲気を変えたいとき、家具を買い替えなくても、色を取り入れる方法があります。たとえば、クッションカバー。ブランケット。テーブルクロス。小さな花瓶や、飾る絵。面積の小さなものでも、色が変わると、部屋の印象は変わります。
明るい黄色を加えれば、日差しのようなあたたかさを感じるかもしれません。淡いピンクなら、やさしくやわらかな雰囲気に。深いグリーンなら、落ち着いた自然の空気を感じるかもしれません。もちろん、色をたくさん使っても大丈夫です。
好きな色がいくつもあるなら、その色たちが一緒にある景色を楽しんでみる。部屋の色に、決まった正解はありません。もし迷ったら、今ある部屋の色に、好きな色をひとつ加えるところから。季節に合わせて変えてみるのも、楽しみのひとつです。
光と明かりを見直してみる
同じ部屋でも、朝と夜では、雰囲気が違って見えることがあります。朝の自然光が入る部屋。夕方のやわらかな光が差し込む部屋。夜、少し照明を落とした部屋。光の違いは、部屋の印象を変える大切な要素です。
日中は、カーテンを開けて自然光を取り入れてみる。窓辺に椅子を置いて、外の景色を眺められるようにしてみる。夜は、部屋全体を明るくするだけでなく、必要な場所に小さな照明を置いてみる。テーブルの上や、読書をする場所に明かりを加えるだけでも、空間に変化が生まれます。
ただし、明るさの好みは人それぞれ。暗めの照明が落ち着く人もいれば、明るい部屋が好きな人もいますので、一緒に住まわれる方がいらしたら、その方の事も考えながら、自分の目や体にとって心地よい明るさを探してみてくださいね。
香りや音で、部屋の楽しみを増やす
部屋の居心地は、目に見えるものだけで決まるわけではありません。好きな香り。窓から聞こえる鳥の声。静かな音楽。お気に入りのお茶の香り。そんな小さなものも、部屋で過ごす時間を豊かにしてくれます。
たとえば、朝は好きな音楽を流してみる。午後は、お茶をいれる時間を楽しんでみる。窓を開けられる日は、外の空気を感じてみる。香りを楽しみたいときは、好きな石けんや、香りのよいハンドクリームを使うだけでも。特別な道具をそろえなくても、いつもの暮らしの中にあるものが、心地よい時間を作ってくれます。
香りや音が苦手な場合は、無理に取り入れなくても大丈夫です。静けさそのものが好きなら、それも立派な居心地のよさです。
最後に「自分が楽に過ごせるか」を確かめる
部屋づくりをしていると、つい見た目を整えることに夢中になってしまうことがあります。でも、どんなに素敵な部屋でも、そこで過ごす自分が不便だったら、少しもったいないですよね。
よく使うものは、手の届きやすい場所にあるか。座ったときに、ゆっくりくつろげるか。部屋の中を移動しやすいか。掃除や片づけが負担になりすぎていないか。そんなことも、時々確かめてみると良いかもしれません。見た目を整えるために、毎日の手間が増えてしまうなら、少し変えてみてもOKです。
お気に入りのものを飾りながら、使いやすさも大切にする。自分にとって無理のない形に整えていく。それが、長く心地よく暮らせる部屋につながっていきます。
居心地のよい部屋を作る、小さな暮らしのレシピ
最後に、今回の手順をまとめてみます。
材料
- 今ある部屋と家具
- 自分の好きなもの
- 少しの時間
- 心地よく過ごしたいという気持ち
作り方
- その部屋で、どんな時間を過ごしたいか考える。
- 部屋の一角に、好きな場所をひとつ作る。
- いつも目に入る場所を、少しだけ整える。
- 好きな色をひとつ加えてみる。
- 光や明かりを、自分の好みに合わせてみる。
- 香りや音など、五感で楽しめるものを取り入れてみる。
- 自分が楽に過ごせるか、実際に確かめてみる。
できあがりは、誰かに見せるための部屋ではなく、自分が心地よく過ごせる部屋。
一度に完成させなくても大丈夫です。今日はクッションの位置を変えてみる。明日は、棚の上に花を飾ってみる。来週は、窓辺でお茶を飲んでみる。そんなふうに、少しずつ変えていくのも楽しそうです。
居心地のよい部屋は、買いそろえて完成させるものではなく、毎日の暮らしの中で、少しずつ好きになっていく場所なのかもしれません。