「定年を迎えたけれど、これまでの経験を活かしてスモールビジネスを始めたい」 「個人事業主として活動しているけれど、老後の資金対策として法人化(個人版リミテッド)ってどうなんだろう?」「新たな分野でチャレンジしてみたい!」などなど。
人生100年時代、60代を迎えてからも現役で働き続けるシニア世代が増えています。その中で、密かに注目を集めているのが「合同会社(LLC)」の設立です。
合同会社は、株式会社に比べて設立費用が安く、手続きもシンプルなため、お一人やご家族経営のスモールビジネスに最適です。さらに、老後の生活を守る「金銭面」において、個人事業主にはない強力なメリットがたくさんあります。
今回は、老後に合同会社を設立するメリットと、絶対に知っておきたい「厚生年金」の注意点について分かりやすく解説します。
70歳まで厚生年金に加入できる!知っておくべき「2つ」の注意点
合同会社を設立して自分に「役員報酬(給料)」を支払う形にすると、原則70歳になるまで厚生年金に加入し続けることができます。これにより将来もらえる年金額を増やすことが可能ですが、老後ならではの重要なルールが2つあります。
① 70歳以降は「70歳以上被用者」になる
厚生年金に加入できるのは「70歳になるまで」。70歳の誕生日の前日が含まれる月以降は、厚生年金の保険料を納める必要はなくなります(=保険料の負担はゼロになります)。 ただし、健康保険(協会けんぽ等)には原則75歳(後期高齢者医療制度に移行するまで)加入し続けることになります。
② 「在職老齢年金」による年金支給停止に注意!
ここがシニア起業で一番気をつけなければならないポイントです。 60歳以上の方が厚生年金に加入しながら働く場合、「毎月の役員報酬(総報酬月額相当額)」と「本来もらえる老齢厚生年金の月額」の合計が50万円を超えると、超えた分の年金が一部、または全額支給停止になってしまいます。
- 対策: ご自身の年金額に合わせて、役員報酬を低め(合計が50万円を超えない範囲)に設定します。そうすることで、国の年金を全額受け取りつつ、会社の経費を賢くコントロールできます。
合同会社を作る「金銭面」の主なメリット5選
個人事業主のまま働く場合と比べ、法人(合同会社)にすることで、老後資金を「守り」「増やす」ための強力な仕組みが使えるようになります。
メリット①:役員報酬による「給与所得控除」で賢く節税
個人事業主の場合、「売上 - 経費 = 所得」となり、残った利益全体にダイレクトに所得税や住民税がかかります。 しかし、法人化して自分に「役員報酬」を支払う形にすると、受け取った役員報酬からさらに「給与所得控除(最低55万円〜)」を差し引くことができます。
同じ利益であっても、税金がかかる対象(課税所得)をぐっと減らすことができますよ。
メリット②:家族への「所得分散」で世帯全体の税金を抑える
もしご家族が、各種事務や作業などを手伝ってくれている場合、そのご家族を法人の役員や従業員にして「お給料」を支払うことができます。 経営者1人に利益を集中させて高い税率を課されるよりも、家族に分散して支払った方が、それぞれの税率が低くなるため、世帯全体の税負担を大幅に抑えることが可能です。
メリット③:「社宅制度」で家賃の大部分を経費にする
自宅を合同会社の事務所として使用する場合、法人名義で賃貸契約を結び直して「社宅」という形にすることで、家賃の大部分(一般的に5割〜8割程度)を会社の経費(損金)として処理できるようになります。
個人事業主の「家事按分」よりも、圧倒的に広い範囲で固定費を経費化できるのが法人の強みです。
メリット④:経費の枠が広がる(小規模企業共済や旅費規程)
法人ならではの制度を活用することで、さらにお金を残せます。
- 小規模企業共済の枠が広がる: 共同経営者となったご家族も加入できるようになれば、世帯全体での控除枠が広がります。
- 出張旅費規程の活用: 業務に関する移動(視察や打ち合わせなど)の際、あらかじめ規程を作っておけば「出張日当」を支給できます。これは会社側では経費になり、受け取る個人側では「非課税」になる非常にお得な仕組みです。
メリット⑤:万が一のときも安心な「有限責任」
老後の大切な個人資産を守るという点でも、法人は優秀です。個人事業主は事業で発生した借金やトラブルに対して、個人の財産を投げ打ってでも支払う「無限責任」を負います。しかし、合同会社であれば、自分が出資した金額の範囲内でのみ責任を負う「有限責任」となります。リタイア後のリスクヘッジとして非常に重要です。
まとめ:仕組みを賢く使って、安心な老後スモールビジネスを
合同会社を作ることで、「厚生年金の期間を伸ばして将来に備える」「在職老齢年金に引っかからない絶妙な役員報酬を設定する」「家賃や家族への給与で賢く節税する」という、個人事業主には真似できない「老後のマネープラン」が実現可能になります。
ただし、会社を設立すると、たとえ赤字の年であっても毎年約7万円の「法人住民税の均等割」という固定コストがかかる点には注意が必要です。設立の際には、税理士の先生にご相談されてみてくださいね。
現在の事業の売上規模や、将来的にご家族とどのようにビジネスを育てていきたいかというバランスを見極めながら、老後は「法人化」という選択肢も検討されてみるのも良いかもしれません。

