高齢の家族を思うとき 「うちの親はしっかりしているから大丈夫」 そう思いたくなる気持ちは、誰にもあるかと思います。
しかし消費者被害の研究では、 被害に遭った高齢者の95.2%が「自分は詐欺に遭わないと思っていた」 と答えています。親も子も、被害は自分には関係ない、そう思い込んでいるかもしれません。
実際、筆者の母も詐欺とは異なるかもしれませんが、本人が納得しないままの支払い被害、に3回ほど遭いました。
親の心のすき間に要注意
高齢になると、 家族が忙しくなったり、 友人が減ったり、 話し相手が少なくなったり。そんな日々の中で 「誰かが来てくれる」 「話を聞いてくれる」 それだけで心がふっと温かくなることがあります。
心理学では、これを 単純接触効果 と呼びます。 頻繁に会う人ほど、信頼しやすくなるという現象です。なので訪問販売の人や営業の人が、 いつの間にか“家族のような存在”に見えてしまうことがあります。
すると心を許した高齢親は、良く言えば相手に「優しさ」を持ち、悪く言えば「言いなり」になってしまう事があるのです。
頻繁に訪れる営業担当者が、 「家族のような存在」に見えてしまうことがあります。これは弱さではなく、 人とのつながりを求める心の自然な反応 であり、擬似家族化(pseudo-family)と呼ばれます。
(※そしてその効果をビジネス上、営業員は知っていることが多々あります)
疑似家族化の反応、それは高齢者の弱さな訳ではなく、 人として、とても自然な心の動き です。しかし自らの望むものではない結果をもたらす事が多々あります。またそれを知られてしまうと、営業担当者などが頻繁にやってくるようになる=金額の大小にかかわらず意図しない金銭的支払いが増えてくることがあります。
私の母の住む地域も多かったです。
保険営業員等がマンションのあちこちの家に入り込み、しょっちゅうお昼をごちそうになっている、そんな付き合いになっているとか。無料だから試飲してみて!と言われた乳酸菌飲料が、もともと申込書だった、とか 。不用品廃棄のお願いをしたら、部屋のものを ”捨てる捨てない”の判断を業者がしてしまったりとか(捨てれば捨てるほど業者はお金になりますから)。
水道の蛇口が調子悪かったら”交換しかありません”と、費用5万円を提示されたりとか(これは私が介入して、他業者にしたら3000円位で済みました)。
ベランダの天井から吊るエアコン室外機が落ちないようにと細い針金をぐるぐる巻きにされて1万円とか(そんなの見たこと無いですし、私が確認したらグニャグニャの柔らかい針金で、普通の文具ばさみでバチバチ切れました)。
玄関に某宗教の方が来て、大声で叫んでいかれたりとか。
高齢者が沢山住む地域には、様々な営業の方々が、次から次へと訪れます。
あれだけの人たちが玄関にやってくる中、全ての事を高齢者が一人で向き合って断ることは、経験してみるとまず不可能だと分かります。お年寄りが住んでいることは、そういうプロの方は見極めるのが早いです。簡単な事から一つ言うとしたら、予防として玄関先にシルバーカーとかを出しっぱなしにはしない方が良いです。
高齢者が被害に遭いやすい典型パターンとは
ここからは高齢者が被害に遭いやすい4つの典型パターンについてお話ししたいと思います。
1.独り暮らしの寂しさを埋めるように、訪問者を信じてしまいます。
独居高齢者は、被害リスクが特に高いと言われています。 女性は男性の3〜4倍被害に遭いやすいというデータもあります。「誰かが来てくれる」 その嬉しさが、判断よりも先に心を動かしてしまいます。
2.「無料だから」から始まる関係
無料点検、無料相談、無料体験。 これらは、返報性の原理(親切を返したくなる心理)を利用した典型的な手口です。「こんなに親切にしてくれたし…」 そう思ってしまいます。
3.不安をあおられると、心が揺れる
- 「水道水が危険です」
- 「今すぐ工事しないと大変なことになります」
高齢者は不安に敏感です。 不安を避けたい気持ちが強く、契約に傾きやすくなります。
4.認知機能の変化は「人を信じやすくなる」から始まる
これは一番知っておきたい事なのですが、認知症の初期は、 記憶よりも先に「人を信じやすくなる」という変化が起こることがあります。なので 「しっかりしているように見えるのに、なぜ?」 という状況が生まれます。認知症の初期だからこそ、娘息子も親を信じてしまい、一緒に騙されてしまう事がありますので、要注意です。
家族ができること
そこで、親が高齢になってきたら気を付けたい「家族が出来る事」にはどんなことがあるのかというと。
1.「相談してくれて嬉しいよ」と伝える
高齢者は「迷惑をかけたくない」という気持ちが強いです。 だからこそ、 相談は迷惑ではなく、むしろ嬉しい という姿勢を伝えることが大切です。
2.孤独は、被害の最大要因です。 でも、孤独を減らす方法は、とてもシンプルです。
- ちょっとした雑談をする
- 「最近どう?」と声をかける
- 週に一度でも電話をする
これだけで、心のすき間は大きく変わります。
3.「一緒に見る」習慣をつくる
契約書やチラシを、 「一緒に見る」 それだけで被害は大きく減ります。高齢者は「自分で判断しなきゃ」と思いがちなので、 「一緒に見ようね」と言ってあげるだけで安心します。
最後に
高齢者の消費者被害は、 判断力の問題ではなく、心の問題です。そして、 家族が“相談の受け皿”になることが、最大の防御力になります。
高齢者のお金を守るというのは、 通帳を守ることだけではなく、その人の心を、孤独から守ること。 それが、一番最初に取り組めることでもあり、いちばん大切なことでなのかもしれません。

