老後のお金について考えるとき、多くの人は「いくら貯めれば安心なの?」とまず考えます。私もとにかく政府の「老後2000万」を信じましたが、何となく不安も消えませんでした。色々な家庭があるにも関わらず、2000万を信じていいのか?と。
もちろん、お金の準備は大切ですが、加えて人生には、お金だけでは解決できない問題もあるはず。
病気になったとき。その病気によって総額は全く異なりますし、障害者をされるかされないか?でも必要額は大きく異なります。また、その障碍者認定の基準だって、この先も同じとは限りません。
また、介護が必要になったとき。災害に見舞われるなど突然のトラブルが起きたとき。そんな時に、自分一人ですべて対応することは簡単ではありません。家族がその時に生きているかだって分かりません。
そこで大切になるのが、やはり「頼れる人とのつながり」という資産です。
というのも、私自身下町の出身でして、老後の父母を見ていて「近所の連携、特に心に関する繋がり」はとても大きいと感じたからです。
人は一人だけでは人生を支えきれない
老後も自立した生活を送りたいと誰もが思うことです。誰にも迷惑を掛けたくない、そんな言葉が良く聞かれます。もちろん自分で選択する力は重要ですが、自分一人で何でもできると思える時期は、残念ながら永遠ではないのですよね。なので私たちが老後の自立の為に準備しておく事は「必要な時に、適切な人やサービスにつながる力を持つこと」です。
例えば、老後に起こる可能性がある問題には、病院や介護の手続き、住まいの問題、家の修理、詐欺や契約トラブル、心の不調などがあります。このような時に「相談できる人がいる」ということは、大きな安心材料になります。それを、若いうちからリストアップにしておく、ということです。
今の時代は昔のような近所づきあいほど濃い付き合いは無くなってきているかもしれません。けれど、老後ほど近い距離に住む人、が大切になってきます。遠くに住む親せきはもう頼れない事が増えてくるかもしれません。
なので老後に助けてくれる人は、必ずしも家族や親族だけではありません。行政も勿論その一つです。それら相談先を大事なリストとして手の届くところにまとめておくことは必要です。
信頼できる専門家、地域の相談窓口、長い付き合いのある仕事関係者、友人や知人、必要な時に頼れるサービス。こうしたつながりを、いまのうちから大切にしておくこと、それも人生を支える大切な資産になります。
心理学でいう「ソーシャルサポート」
心理学では、人とのつながりから得られる支えを、「ソーシャルサポート(社会的支援)」と呼びます。ソーシャルサポートには、下記のようなものがあります。
情緒的サポート:話を聞いてくれる、気持ちを理解してくれる存在。
道具的サポート:実際に手助けをしてくれる存在。
情報的サポート:必要な情報や知識を教えてくれる存在。
人とのつながりは、単なる「人付き合い」ではなく、人生の困難を乗り越えるための、大切な支えでもあります。近所づきあいをないがしろにし、例えばマンションなどでも「管理組合」に参加しない。等、若いころはそれでも生きていけるかもしれませんが、老後はかなり厳しくなることがあります。
実際、筆者の近隣でも、助けてあげたいといくら周りが思っていても、素性が分からない人や、近所づきあいをしてこなかった方を支えるほど、優しさだけでは通用しない=余力のある人は居なくなってくるのが「高齢化社会」の現実です。
専門家につながる力も「資産」
昔は「人に迷惑をかけてはいけない」と教えられることが多くあったかもしれません。しかし、これからの高齢化社会は「困った時に相談できる力」「困った時のサポート依頼先を知っている事」がますます重要になります。近所にこだわる事もありません。例えば、
- 法律の問題なら専門家へ
- 介護なら相談窓口へ
- 心の問題なら専門職へ
- パソコンや家電なら詳しい人へ
ということです。自分だけで解決しようとせず、その道のプロにつながる事は、自分の人生を守るための賢い選択です。またそれは逆に、なるべく身近な人に迷惑をかけない老後の過ごし方でもあります。近隣の方の優しさに甘えすぎたがために、最終的に揉め事になった、などという話も、今の高齢化社会では聞かれます。今、まだ動けるうちに、近隣以外の相談先リストを作っておく事も大切な老後準備かもしれません。
大切なのは、「困ってから探せばいい」とは限らないということです。本当に困った時、人は心にも余裕がありません。だからこそ、元気な時から、「この人なら相談できる」という関係を少しずつ作っておくことが大切です。例えば、
- 丁寧に対応してくれるお店を大切にする
- 専門家とのつながりを持つ
- 感謝を言葉で伝える
- 良い関係を長く育てる
こうした積み重ねが、未来の自分を助けてくれます。ただ、そこまで準備しておいても、高齢化社会ではいつどんな繋がりが切れてしまうかは分かりません。お互い年をとれば、出来ない事が増えてくるのです。
頼ることは、相手の価値を認めること
人は「頼ること」に罪悪感を持つことがあります。「迷惑かな」「自分で何とかしなければ」そう考えてしまうかもしれません。また反対に、人の迷惑を考えずに身近な人に、頼ってばかりになってしまう人もいます。どちらに傾いても、幸せな老後からほど遠くなってしまいます。
しかし、誰かの知識や経験を頼ることは、その人の力を認めることでもあります。専門家に相談すること、信頼できる人に助けてもらうことは、人と人が支え合う自然な関係です。
専門家の方に必要な費用を払いながら頼ることは、それは専門家の方にとっても嬉しい事です。
おわりに
老後への備えというと「いくら貯金があるか」に注目しがちかもしれません。でも本当に人生を支えてくれるものは、お金だけではありません。困った時に「この人に相談してみよう。」と思える相手がいること。そしてその対価としてお金を払うとしても、安心して払える人を若いころから見極めておく事。
必要な時に「助けを求められる自分」を作っておく事。それもまた、人生における大切な資産です。

