記事内に広告が含まれています。

親の介護で知っておくべき5つのお金&元気なうちに話し合っておきたい6つのお金

老後資金

親の介護をしていると、お金について考える場面がたくさんあります。介護用品を買ったり、病院へ連れて行ったり、食事を用意したり。親が元気なうちは、「親の生活に必要なお金は、親のお金から出す」という考え方で何とかやっていけることもあります。

けれど、親の状態が悪くなり、「もしかしたら、もう長くないかもしれない」と思う時期が来ると、別の問題が目の前に現れます。

親が亡くなったら、このお金はどうなるのだろう。

葬儀費用はどうする?
親の預金はどうなる?
銀行口座からお金を引き出せるの?
いつから「親のお金」ではなく「相続財産」になるの?

介護をしている家族にとって、これは決して遠い話ではありません。

この記事の前半では、介護で起こりえる5つのお金の話。そして最後に、亡くなってからではなく、元気なうちにしておく6つのお金。をまとめています。

亡くなる前」と「亡くなった後」では、大きく違う

まず知っておきたいのは、親が生きている間のお金と、親が亡くなった後のお金は、同じようには扱えない ということです。親が生きていて、本人に判断能力があり、本人が自分の意思でお金を使っている。これは、親自身のお金です。

一方、親が亡くなると、その時点で残っている預貯金は相続財産になります。民法では「相続は、死亡によって開始する」と定められています。つまり、相続が始まるのは、銀行に死亡の連絡をした時ではなく、親が亡くなった時です。

一方、銀行の手続きは別です。全国銀行協会は、口座名義人が亡くなった場合には金融機関への連絡が必要と案内しており、銀行が死亡の事実を知ると、原則としてその口座の預金の入出金などの取引が制限されます。

つまり、「銀行にまだ死亡を知らせていないから、親の口座のお金を自由に使っていい」ということではありません。銀行がまだ死亡の事実を知らず、口座が通常どおり動いている状態だったとしても、亡くなった後の預貯金は相続という別のルールの中で扱われます。

「昨日まで親のお金だったものを、今日から子どもが自由に使える」ということではありません。

※ なお、亡くなった後でも、一定の条件のもとで相続人が預貯金の払い戻しを受けられる「預貯金の仮払い制度」があります。葬儀費用など、当面必要となる資金について利用できる場合があります。ただし、金額や手続きには条件があります。後述しています。

筆者の経験談

私自身、母の介護をしていたとき、「もう母は長くないかもしれない」と思ったことがありました。

そのとき、頭に浮かんだのが葬儀のことでした。葬儀にはまとまったお金が必要になります。けれど、親が亡くなった後、その人名義の預金を家族が自由に引き出して使えるとは限りません。だから私は、そのとき、「葬儀費用だけはどうにかしておかなければ」と思い、母が存命のうちに、葬儀費用として必要になるお金を引き出しておきました。

これは、私自身が母の介護をしていたときの経験です。ただ、今になって考えると、こうした場面こそ、家族にとっては「知っているつもり」と「実際にどうすればいいのか」の間に大きな差があるところなのだと思います。

「亡くなったら口座が凍結される」という話について

親が亡くなると銀行口座が「凍結される」という話を聞いたことがある人も多いと思います。実際には、銀行が死亡を知った後、原則としてその口座の入出金などが制限され、相続手続きへ進むことになります。すると「葬儀費用はどうするの?」という問題が出てきます。

以前は、故人の預金を遺産分割前に引き出すことには大きな制約がありました。しかし、2019年の相続法改正によって、遺産分割前でも一定の範囲で相続人が預貯金の払い戻しを受けられる「預貯金の仮払い制度」が設けられています。全国銀行協会も、葬儀費用など当面必要となる資金について、この制度を案内しています。

ただし、金額や手続きには条件があります。「亡くなったら、親のカードでATMから必要なだけ引き出せばいい」という話ではありません。

「引き出せる」と「自由に使える」の違い

ここは、とても大切なところです。たとえば、親のキャッシュカードと暗証番号を知っていて、ATMでお金を引き出すことができたとしても、実際に引き出したお金を誰のために、何に使ったのかという問題は残ります。

特に相続人が複数いる場合には、「そのお金は何に使ったのか」「誰のために使ったのか」「相続財産としてどう扱うのか」という説明が必要になる場合があります。

物理的にお金を引き出せることと、そのお金を自由に使ってよいことは別です。これは、生前の介護費用を扱う場合にも共通する考え方です。

介護をしてきた人ほど、境目が分かりにくい

ここが、介護をしてきた家族にとって難しいところなのだと思います。

長い間、「親のために買い物をする」「親の病院代を払う」「親の生活費を管理する」「親の口座から必要なお金を出す」ということを続けてきた。なので親が亡くなった瞬間に、「これはもう相続財産です」と言われても、気持ちの上ではすぐに切り替えられないことがあります。

しかも、介護をしてきた人ほど、「自分が一番親のお金を管理していた」という状況になりやすいです。だからこそ、親が元気なうちから、「もしものとき、お金をどうするか」を少しずつ考えておくことは大切なのだと思います。

亡くなってからではなく、元気なうちにしておくこと

できれば親が元気なうちに、

  • どこの銀行を使っているのか
  • どんな預金があるのか
  • 日常のお金をどう管理しているのか
  • 介護が必要になった場合、誰が手続きをするのか
  • 本人が銀行へ行けなくなったらどうするのか
  • もし亡くなった場合、誰に連絡するのか

などを、話せる範囲から確認しておきたいものです。もちろん、親に「死んだ後のお金の話をしましょう」と切り出すのは、簡単なことではありません。

だからこそ、「もし病院に長く入院することになったら、銀行のことどうしようね」「私が代わりに手続きする必要が出てきたら、どうすればいいかな」くらいのところから始めてもいいのだと思います。

親のお金を守ることは、家族を守ること

親のお金は、親が生きている間は親の生活を守るためのお金です。介護が必要になれば、介護のために使われます。そして、親が亡くなった後は、相続財産として扱われます。その間には、「親のお金をどう管理するのか」という、とても大切な時間があります。

介護をしている家族は、その時間の真ん中に立つことになります。だからこそ、「親のお金だから使っていい」でもなく、「親のお金だから触ってはいけない」でもなく、本人の意思を尊重しながら、必要なときには正式な仕組みを利用して管理する。という視点が大切なのだと思います。そして、分からないことがあれば、銀行に相談する。

全国銀行協会も、本人の意思確認が難しい場合や突然の病気・事故などで代理人による払い出しが必要になった場合には、各銀行への相談や、銀行独自の代理人制度などを案内しています。

親が元気なうちは、つい先送りしてしまうお金の話。けれど、介護が始まったら、「いつか」ではなく、「今のうちに少しだけ」考えておく。それだけでも、いざというときの家族の負担は変わるかもしれません。

介護は、親が亡くなるまで続く生活です。そして親が亡くなった瞬間に、介護から相続へと、家族を取り巻くお金のルールも変わります。だからこそ、介護のお金を考えることは、相続を考えることにもつながっています。

※預貯金の代理払いや相続預金の払い戻しは、本人の判断能力、相続人の状況、金融機関などによって必要な手続きが異なります。実際の手続きについては、取引金融機関や専門家に確認してください

参考資料

※当記事は、姉妹サイト:介護相談室 より転載しています。