老後のための住まいというと、大がかりなリフォームを思い浮かべるかもしれません。けれど、暮らしやすさを作るのは、必ずしも大きな工事だけではありません。
家具の置き方を少し変える。収納する場所を見直す。照明を一つ増やす。
そんな小さな工夫でも、毎日の「ちょっと使いにくい」を減らすことができます。そしてこうした準備は、自分の老後や親の介護が必要になったときにも役立ち、これからの生活における ”資産防衛” にもなります。
準備しておくことでけが予防にもなり、医療費削減や健康寿命にも寄与するかもしれません。今からできる住まいの小さな工夫を下記まとめてみました。
家具の角と配置を見直す
家具そのものよりも、家具の置き方が暮らしやすさを左右することがあります。通路に家具の角が出ていないか。夜に歩いたとき、ぶつかりそうな場所はないか。少し動かすだけで通りやすくなる家具はないか。「家具を買い替える」前に、「置き方を変える」という方法もあります。
家具の角に足の小指をぶつけて骨折、などという話も良く聞きます。筆者は2年連続、足の小指を骨折しています。小さな骨折でも治るまで意外と長くかかり、その日々の生活は不自由でした。もちろん医療費がかかりました。
床に物を置かない
床に置かれた荷物やコード、めくれやすいマットなどは、歩くときの邪魔になることがあります。「ここに置いておいた方が便利」と思っているものも、一度見直してみましょう。
歩く場所には、なるべく物を置かない。それだけでも、家の中はすっきりします。目から入る情報が少なくなることは脳も疲れづらくなります。脳の健康を考えても、一石二鳥です。
ベッドや椅子の高さを確認する
毎日使うベッドや椅子も、立ち上がりやすさを一度確認してみる。低すぎる場所から立ち上がるのが大変になったり、高すぎる椅子では足が床につきにくかったりすることがあります。
例えば年を重ね、関節が悪くなった時にも和の生活は意外と負担が大きいようです。座布団から立ち上がるよりも、椅子の方が体の負担が少ないのと同じです。今は何ともなくても、将来も使いやすい高さか。家具を選ぶときの視点を、少しだけ変えてみるのもよさそうです。
一気に変更すると費用はかかりますので、少しずつ未来に向けて家具を購入するときに選ぶものを変えて行くと、未来の健康を守り、出費も抑える事になるかもしれません。
「開ける・閉める」が楽な家にする
家の中には、意外と「力を使う動作」がたくさんあります。引き出しを開ける。戸棚を開ける。窓を動かす。瓶のふたを開ける。今は簡単にできることでも、握力や腕の力が弱くなると負担になることがあります。
お年寄りの方や親から「これ開かない」と言われるとき、意外と掃除機にはめ込まれている小型充電器だったり、ペットボトルの蓋だったり、そんな小さな物であっても不自由を感じてくることがあります。
ドアノブも握るものよりもレバー式の方が便利です。体に問題が無くても、例えば両手がふさがっていてもレバー式のものならドアも開けやすい、それと同じだと思います。よく使う場所から、「力を入れなくても使えるか」を確認してみましょう。
ドアノブをレバー式に変える位なら、小さな工事と費用で済みます。
重いものを「無理な高さ」に置かない
収納では、空いている場所に物を詰め込むだけではなく、「取り出しやすさ」も大切です。重い鍋や家電などを高い場所に置くと、取り出すときに負担になります。反対に、低すぎる場所なら、深くかがまなければなりません。重いものほど、無理なく持ち上げられる高さへ。収納量よりも、使いやすさを優先してみましょう。
これも、関節一つ痛くなっても不自由する可能性があるばかりか、重いものを落としたときには、床が傷つく、手指や足を痛める可能性があります。私の母は高いものを取るために使った踏み台から落ち、腰を痛めました。その時は、何とか様子見で大丈夫になりましたが、数年後、圧迫骨折をしたいる事に気づきました。
掃除しやすい家にしておく
年齢を重ねると、掃除そのものが負担になることもあります。家具の隙間が多い。床に物が多い。動かしにくい家具が多い。そんな場所は、少しずつ掃除が面倒になっていきます。だからこそ、今のうちに「掃除しやすい家」にしておく。きれいにするより、きれいを保ちやすくする。そんな考え方も、これからの暮らしには大切かもしれません。
出来れば家具でも足のついている家具を買うと、とても掃除がしやすくなり、衛生的になります。日本の家具は足が無いものが多いです。地震が起こった際の家具の転倒を考えると検討の余地はありますが、掃除という点では足付きの家具はおすすめです。
「座ってできる場所」を作っておく
玄関で靴を履く。キッチンでちょっとした作業をする。洗面所で身支度をする。すべてを立ったまま行わなくてもいいように、必要な場所に腰掛けられる場所があると便利です。「頑張って立っている家」ではなく、「必要なら座れる家」。そんな住まいも、これからの暮らしを助けてくれます。
ちょこっと座る椅子がある暮らし。それは生活の小さな瞬間で、小さな心地よさを生みますし、疲れやけが防止になります。年を重ねると整骨院通いが多くなる場合もあります。一度どこかを痛めると他の場所に負担がかかり、連鎖的にあちこち痛くなったりする事もあります。一つ一つの行動が穏やかにできる座る場所づくりは、やはりこれも未来の健康と出費に関わってくると思います。
コンセントの位置も一度確認する
意外と見落としやすいのが、コンセントです。毎日使う場所なのに、低すぎたり、家具の裏側にあったりすると、抜き差しのたびに無理な姿勢になることがあります。大きなリフォームをする機会があれば、コンセントの位置も一緒に見直してみる。「どこにあるか」だけでなく、「無理なく使えるか」を考えてみましょう。
小さな工事でも電気屋さんにお願いする事が出来ます。我が家はお風呂のリフォームの際に、全部一度にお願いしましたが、その時は何も聞かれずにコンセントの位置を決められてしまいました。
今思えば、いつおお願いしている業者さんに、コンセントの位置だけ変更してもらえばよかったと思っています。地域で活動している業者さんなどでは、コンセント一つでも来てくれます。
夜の家を一度確認する
昼間は気にならない場所でも、夜になると暗くて見えにくいことがあります。特に、寝室からトイレまでの動線は一度確認してみたいところ。「ここ、夜は意外と暗いな」と感じる場所があれば、足元灯やセンサーライトなどを検討してみましょう。昼の家だけでなく、夜の家の確認は重要です。
小さな工夫が、これからの暮らしを助けてくれる
こうして見てみると、老後の住まいに必要なのは、必ずしも大きなリフォームばかりではありません。夜の照明を一つ増やす。家具を少し動かす。床に物を置かない。重いものの収納場所を変える。掃除しやすいように物を減らす。座れる場所を作る。どれも、今日から少しずつ考えられることです。
そして、こうした工夫は自分の老後だけでなく、親の介護が必要になったときにも役立ちます。介護が始まってから、家の中を一気に変えるのは大変です。というより、間に合いません。筆者は在宅介護を経験していますが、介護はある日だからこそ、まだ元気なうちに、できるところから少しずつ。
介護が始まってから、また自分が不自由を感じてからでは、忙しくてこれらの対応は追いつかない事が多くなります。
まとめ
老後に向けた住まいの準備は、「介護が必要になったら考えるもの」ではありません。今の暮らしを少しだけ、未来の自分にも使いやすい形にしておく。それだけでも、将来の負担を減らせることがあります。
そして、ケガをしにくく、掃除がしやすく、無理な動作をしなくても暮らせる家は、健康を支える環境にもなります。住まいを整えることは、単なる便利さのためではありません。
これからの医療や介護の負担を少しでも減らすための、暮らしの準備。
そう考えると、家の中にある小さな「使いにくい」は、今のうちに見つけておきたいものです。老後資金を準備するように。健康を大切にするように。「お金がかかりにくい暮らし」を、住まいから少しずつ準備しておく。そんな考え方も、これからの老後準備=資産防衛 の一つなのかもしれません。

