年金繰り下げ受給の盲点【この5つ要注意】

 老後資金の悩み

年金繰り下げ受給はお得なように思えますが、実際それぞれの方の健康状態などにより、いつまで繰り下げた方が良いのか?そもそも繰り下げない方が良いのか?は異なってきます。
 

 そこで年金繰り下げに特化して、ここで注意事項をまとめています。よく年金受給と繰り下げと命の長さを考えたときの「損益分岐点」は?などの話が出てきますが、実際には年金繰り下げに関わる法も関わってきます。寿命も関わってきます。その為 損益分岐点という観点からの計算よりも「時効により貰えなくなる年金額」の方が大きいと思われ、その点から下記まとめました。
 

年金は5年遡って請求できる

 通常に繰り下げ、受給を開始したい時に申請する場合は、もちろんその時の増額分プラスでの受給開始となりますが、例えば、何らかの理由でまとまったお金が必要になった時、それまでの5年間年金を遡り、5年分をまとめて一時金として受給出来ます「年金受給申請をしていないので、その分今から一度に貰い始めたいです」と申請する形になります。その後の年金支給額は、年金請求時の5年前に繰り下げ請求があったものとみなされた計算で支給されます。
 

 言い換えると、5年以上の繰り下げ年数があった場合の一時金は、5年より前の年数分を繰り下げたと認め、5年前時点での繰り下げ増額された額で5年分の年金は計算され、一括して支給されます。(例:72歳時に、67歳から72才迄の5年分を一括支給した場合、繰り下げは65歳から67才迄の2年分繰り下げたものとして増額計算され支給されます)(※令5年4月の制度改正以前は、5年以上前の分は時効で消え、増額なし65歳時の支給額でした)。
 



繰り下げ時の要注意点

 

しかし注意点があります。
 

過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金等に影響する場合があります。
 

また加入者が存命ではなく亡くなられた時には、支給額は異なります。どの様な受給になるか意外と分かっていない事が多いと思います。せっかく繰り下げをしてきたにもかかわらずお金が手元に残りませんので、下記も続けてご確認くださいませ。
 



繰り下げ待機中にその方が亡くなられた場合

日本年金機構 年金の繰り下げ より

繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われます。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなります。

 

 繰り下げ待機中に加入者が亡くなられた場合には、一時金は繰り下げによる増額はありません。なおかつ5年以上前の分の年金は時効で受け取れません。
 

繰り下げ受給中にその方が亡くなられた場合

 年金繰り下げ待機中ではなく「受給を開始してから」加入者が亡くなった場合には、過去の年金一括支払い(一時金)は貰えません。加入者の亡くなられた日が年金受給開始から日が経っていなければ、大事な人を失ったうえに年金増額の恩恵を受ける事も出来ません。
 

 結果として、
 

1.年金繰り下げ待機中 に加入者が亡くなった場合は、増額無しでの5年分が一時金として支払われますが、5年より前の分は時効で貰えません。
 
2.年金繰り下げ 受給開始後 に加入者が亡くなった場合は、例え受給期間が数か月しかなかったとしても、一時金も貰えません。
 

年齢に関わらず、人がいつ生涯を終えるかは分からないものですので、繰り下げ待機をしている際には、70歳(65歳時 年金開始の5年後=時効で年金が消え始める最初の年)前後には、再度年金繰り下げ受給に関して、よく検討したほうが良さそうです。
 

また、命に関わる大病にかかってしまった時にも、医療費もかかりますし、繰り下げについて検討しておいた方が良いかもしれません。
 



年金の支給停止に注意

 その他の注意点としては、繰り下げ受給などによる収入増加です。年金を増やす時、年金と給料で48万円を超えてしまうと、超過分の年金の半分が支給停止になります。勤務を減らす、若しくは年金繰り下げ受給の開始を考え、年金が支給停止にならないようにします。